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はじめに

最近、保険ではなく自費で歯を治すことが多くなったのだが、自費治療について思うことがあったのでメモ。
これまで歯の治療は保険が使えるから安いと盲目的に思い込んでいたが、どうやら歯医者も治療方法も選択する時代になってきている。

日本の保険治療でできることは限られている

海外に比べても日本の歯の治療費は格安と言われている。これは日本人の我々にとってみれば喜ばしいことだが実情は異なる。それは、保険適用でできる治療が限界までコストダウンされているということだ。つまり安かろう悪かろうの世界である。

詳しく言うと、

・最低グレードの材料
・最低グレードの歯型の精度
・最低グレードの処置

しかできないということだ。例えば虫歯治療でよく使われる銀歯だが、パラジウム合金という安い金属が使われている。先進国で使っているのは日本くらいとも言われている。見た目も悪ければ経年劣化にも弱い。
そして、歯形の精度の悪さや安い接着剤の弱さも相成って、長年使っていると銀歯の隙間から再度虫歯菌が入ってくるというわけである。

歯医者は保険治療をとにかく嫌がる

私は前歯が欠けていて何度か保険治療で詰めて直したことがある。

しかし、前歯は先端面積が少なく保険治療で良く使われるCR(レジンで硬化させる白い詰め物)のくっつきが悪い。そのため治してもすぐに欠けるを何度も繰り返した。終いには「もうこれ以上は治せません」とか、他の歯医者に行っても初診の時点で「うちはやりません」と治療を断られるようになった。

後でわかったことだが、保険治療で同じ個所を何度も頻繁に治療するのはNG行為だそうだ。なぜなら不当に治療を繰り返して金儲けしていると歯医者が保健当局に睨まれるからだ。また、治療が難しい割に保険治療だと治療単価が安く儲からないのでやっても割に合わない。どうりで断られるわけだ。

その後、今お世話になっている歯医者に出会い前歯を修復してもらったのだが、その時にはっきり言われた。

「保険適用で使える材料と接着剤は限られていてしょぼいから何度やっても割れるし剥がれる。自費で治療すれば良い材料が使えるからそれで試したら?」と。

そして私の歯の人生の中で初の自費治療となった。使った材料は1グラム2千円とかするやつで今世の中にある材料の中で一番硬いやつ。結果はバッチリ。これまでが嘘のように欠けなくなりとても満足のいく治療となった。

かかった費用を比較すると、かれこれ保険治療で6回は治したから

保険治療:2000×6=12000円
自費治療:6000×1=6000円

トータルで半額。何度も歯医者に行く手間賃も考えると安物買いの銭失いであったことは明白だ。

義理と人情で治す貧乏歯科医

私の友人でおかしな歯医者がいる。ひょんなことから離れたところに住んでいる彼に久々に連絡したところ、最近、歯医者を辞めて日本全国を旅しながら独身を謳歌しているとのこと。

ちなみに、彼は36歳でとあるクリニックの院長をやっていた経歴を持つ凄腕歯医者。
その辞めた理由がまたおもしろい。

「自費治療のあり方について経営者と揉めて嫌になって辞めた。俺は患者に安価で最高の治療をしてやりたいと思って歯医者をやっていたが、売り上げを伸ばすことに執着した経営者から儲からない保険治療ではなく自費治療を患者に勧めろと迫られた。これは本当に自分がやりたかったことではない」

こんな高尚なやつが俺の知り合いにいたのかとまず耳を疑った。全国の銭ゲバな歯医者にこの言葉を聞かしてやりたいとも思うのだが、諸悪の根源は、柔軟な保険適用を認めず徹底的に歯医者を監視する今の日本の保険制度にあるので歯医者は悪くない。歯医者も立派なビジネス。彼らも生き残りをかけて日々苦労しているので一概には責められない。

昔は義理と人情に溢れた町の歯医者が保険適用でも赤字覚悟で患者の知らないところで良い材料を使って治してくれていたもんだが、最近は保険当局の目が厳しくなるわ、歯医者の数が増えてきて利益重視でないと経営が成り立たない世の中になり、人が良い歯医者は貧乏になるだけである。この辺は我々患者サイドも事情を十分に理解した上で、なんでもかんでも保険適用で格安に治療を受けることが当たり前ではなく、良い技術、良い材料にはそれなりの対価を支払うべきだという考えにシフトしていかなければならないだろう。

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